大企業に蔓延する事なかれ主義や、縦割りの組織形態、社内政治。こうした企業体制が風通しの悪さや意思決定スピードの遅さを生んでいる状態は、一般的に「大企業病」と呼ばれます。主に社員数が多い企業でよく見られる傾向のため、このように呼ばれていますが、中小企業やベンチャー企業でも発生する可能性があるものです。
筆者も、自身が大企業に勤めていた中で、「マネジメントという名で管理が目的化した、本質的でない業務ばっかりだ」「社員一丸となって…とスローガンばかりで、実際はセクショナリズムが横行していて他部署に非協力的ではないか」と社内の仕事のやり方に疑問を抱いたり、「働いていて自分自身、成長しているのだろうか」「このままこの仕事を続けて行っていいのだろうか?」と組織の中で働くことの意味に悩んだりを経験してきました。
同じように会社で働くうえで、大企業病がもたらす無駄な業務や保守的な仕事にうんざりしていたり、将来への不安を抱いたりしている人も多いのではないでしょうか?
今回は、大企業病の特徴・症状をお伝えしたのちに、活学的に大企業病へどのように向き合っていくかについてご紹介します。
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Contents
はじめに
大企業病にかかると、業務効率や社員のモチベーションに大きな悪影響を与え、生産能力は20%以上も低下するとも言われています。その対策は社会的にも注目される課題となっており、変革へ向けて取り組んでいる企業も多いと思います。しかし、このような組織内部にこびりついた企業文化を解消させることは、なかなか簡単でないケースがほとんどではないでしょうか。ましてや、大企業の中で働く一社員にとっては、それを変えられる可能性は非常に低いというのが現実でしょう。
実際に、多くの会社員が大企業病の中で働くことに悩んでおり、記事を読んでくださっている皆さんの中にも、「ルールに固執しすぎていて、意思決定が遅い」「本質的でない業務ばかりに労力を割かれている」「みんな上司の顔色ばかりうかがっていて、自由な発想ができない」などと会社への不満を募らせている方もいるかもしれません。
「こんな会社で働く意味なんてない」と思いたくもなってしまう時もあるかもしれませんが、活学では、人生の中で起こること全てに意味があると教えています。
会社生活の中で悶々と感じる不満やもどかしさも、その背景には必ず「あなたの価値観への抵触」があるものです。そうした思いを「自分自身は仕事に対してどのような価値観・信念を大切にしているのか?」ということを見つめ直してみるための機会として、活かしてみて欲しいと思います。
大企業病の8つの特徴
以下に典型的な大企業病の8つの特徴を挙げ、それに対する活学的な見方についても見ていきます。
特徴1.新しいチャレンジをしなくなる
新しいことにチャレンジする際には、多かれ少なかれ必ずリスクが伴うものです。また、これまでやったことのない新たな業務が増えることにもなります。他方、大企業は企業体力も大きく、多少業績が悪化してもすぐに存続が危ぶまれるものでもないため、「現状維持で特に問題ない」と、従来のやり方に固執して、安定を求めるようになってしまうのも自然なことと言えるでしょう。
もし、あなたが「会社が安定しているせいか、マンネリ化している。もっとチャレンジ精神をもってやっていきたいのに」と不満を感じているようであれば、どのような部分にチャレンジ不足を感じているのかを掘り下げてみてはいかがでしょうか?自分が本当はどんなことにチャレンジしてみたいのかに気付くためのヒントになるかもしれません。
特徴2.関与者が多くなり、部分最適に陥る
大企業の特に大型案件では、関与者が大変多くなってきます。業務の効率化のために組織が細分化され、それぞれ担当する部署が割り当てられますが、各部門が自分の持ち場のメリットを優先して考えるようになると、部分最適が起こります。部分最適で改善を図っても、部署間の連携がうまくいかなくなるため、結果としては会社全体の効率を逆に悪化させることにつながります。
あなたが部分最適に嫌気を感じているのであれば、「会社全体の利益のために役立つのが全社員の義務だ」「自己中心的なふるまいは許されない」との思いを強く持っているということだと思われます。
特徴3.責任の所在が曖昧になる
関与者が多い状況下では、責任の所在が曖昧になります。誰もが保身のために、責任を回避しようとするので、“誰かの責任にすればいい”という考えの人が多くなります。本来であれば、会社の掲げた目標や経営理念の実現へ向けて全員が一丸となって事業を成長させていくことが共通目標のはずなのに、部門間で責任のなすり合いが日常的に繰り広げられるようになります。
責任が曖昧な状態が許しがたいものに感じられるのは、きっとあなた自身が責任感を大切にしていることの表れなのでしょう。
特徴4.会議が形式化する
日本の企業は不要な会議が多すぎるとしばしば言われるように、中身のない形式的な会議が多いのも、よくある特徴のひとつです。大企業病に侵された会議では、議題も明確にされないままで、参加者はたいして意味もないやり取りを延々と聞かされることになります。会議の決定事項も曖昧で、参加する意義も薄いため、出席者の大半が議論よりもメールチェックなどのいわゆる「内職」をするようになったりもします。やがて、会議は形式化していき、会議を開催すること自体が目的化します。
「中身のない会議ばかりで、時間の無駄」と感じる人も多いことでしょうが、裏返してみればそれは、自分の時間を効果的に使うことに日頃から意識を高く持っているということなのでしょう。
特徴5.根回しが横行する
本来であれば、会議の場で参加者が議論を繰り広げたうえで結論が出されるというのがまっとうな在り方です。しかし、大企業病の中では社内の権力者にお伺いを立てないと何も進まないため、会議で結論を出す代わりに、事前の根回しが多く行われるようになります。そのため会議の場の外側で決まったことで物事が進んでいくという不健全な形になり、会議の形式化がますます進むことになります。
こうした社内根回しに嫌悪感を覚えるのは、仕事はこそこそ隠れてやるようなものではなく、公明正大に行われるべきものだとの思いの表れかもしれません。
特徴6.重厚なプロセスができる
伝統的な日本企業の縦割りのヒエラルキー型組織では、失敗の防止やプロジェクトの精度向上という名目で、多くの人の決裁を必要とすることになりがちです。社内での稟議や判断を下してもらうために多数の判子が必要とされるような場合も、その代表的な例でしょう。
多様な人の意見を聞くこと自体は、気付かなかった視点に気付けるメリットはありますが、どうしても意思決定が遅くなりがちです。担当者にとってみても、一つ一つが手間のかかるプロセスを経て進められるうえ、決裁者毎に違う考えを持っていると何度も突き返されたりすることもあり、疲弊につながります。
このような重苦しいプロセスをフラストレーションに感じるということは、仕事はスムーズに効率的に進めるべきだとの価値観を持っていることの裏返しと言えるでしょう。
特徴7.物事がなかなか進まない
上記に挙げてきたような大企業病のメカニズムが影響した結果として、企業が物事を推進する力が失われます。責任を避けるために重要なことをなかなか決めようとしなくなるのに加えて、いざ何かを決めて進めようとしても、その度にいちいち大きな手間がかかるようになります。そのため、重要な物事が進まなくなります。
このように遅々として進まない状況に対してストレスを感じるのはどうしてか?と自分自身を見つめ直してみると、時流に乗り遅れないためにスピード感を持ってビジネスを進めなければならないという思いがそこにはあるのかもしれません。
特徴8.社員の興味が内に向く
従業員個人も、会社全体まで視座を上げることは少なく、自分の周辺の仕事にしか目を向けなくなります。また、根回しなどの社内調整に伴い、出世に絡む社内政治的な動きが主眼となって、顧客ではなく上司や社内の権力者、会社からの評価ばかりに目を向けてしまうことになります。
このような社内政治中心のやり方が下らないものに目に映るのであれば、あなたはきっと、仕事の持つ社会的意義というものを大切な価値観として抱いているのでしょう。